2012年06月18日

医師20〜離島の医師〜

☆とある離島で外科医してます。
ちょっと意外かもだけど、Dr.コトーみたいな事はなにもありません。
診療所でもなく、手術室もある様な立派な病院。
荒天なんかで交通が遮断されると何かと大変だけど、それ以外は離島って思ってたより過ごしやすい。
当然土地もバカ安なので、子供が小さいうちは職場は都市部で住居は離島でも良いかも知れないと思う今日この頃。
離島の程度によるとは思うけど。

■離島にも、薬メーカーからの営業はあるんですか?

>>MRさん来訪は頻度はほとんど変わらないと思います。
きっちり営業に見えますね。
某地方都市から普通に日帰りできますんで。

■病院の寮(社宅的な住居)にお住まいなのでしょうか?

>>社宅的なものがあり、4LDKくらいのものが用意されていますが、家族総出で引っ越しでもして来ない限り 広くて却って過ごしにくいですね。
事情があって私はそこにはたまに泊まる程度で、日頃海の向こうから通勤してますので 掃除に寄らなきゃいけないのが面倒です。

■退院のお礼に「くさや」とか持って来られて迷惑じゃないですか?

>>くさやは経験無いですね。
でもやっぱり海産物を頂く機会が結構あります。
こんな事言うとバチが当たりそうですが、もらって嬉しいものと困るものがあります。
とれたてのイカを3杯とか持って来て頂いたりしますが、
捌けないので取り敢えず冷蔵庫に入れてどうしようかと考えているうちに、においが充満して来たりして処理に困ります。
そのままだったり、ちょっと火を加えたりするだけで食べられるものだと おつまみなどとして大変重宝します。

■急遽、動物の診療を頼まれたりとかしますか?

>>獣医さんも普通に存在してるので、人間だけを診てればすみますw

■離島だと患者さんの容体によっては本土送りにするか、様子を見るかの判断に迷うこともあるかと思います。
どの程度の状況になれば本土に送るという基準はマニュアルであるのでしょうか。
それとも先生のご判断に任されているのでしょうか。
海保や自衛隊、消防などに依頼して、離島から本土に急患を送る手順は決まっているんですか?
また、島民の方から大した容体ではないのに、急患輸送してくれと頼まれて困ることはありますか?

>> >どの程度の状況になれば本土に送るという基準はマニュアルであるのでしょうか。

一般論としては 基本的には医師の裁量権、ってやつじゃないでしょうか。
得意分野とか病院の体制にもよります。
施設としてマニュアルを作っても、その技量の無い人間やそれ以上の事を普通にこなせる人間が来れば マニュアル自体の意味が無くなりますし。
状況判断の的確さが腕の見せ所だと思います。
ただ、早め早めに見切りをつける様には注意してます。
送りたい時に自由に送れないこともありますから。
ウチの話を具体的に書くと、今日あわてて送らなくても良いけど、明日、あさって台風来て缶詰にされそうだから本日中に送っとこう、とかです。
そもそも専門がいない科(脳外科とか心臓外科はいません)だと本土送りになりますが、
そんな科が離島にある事自体あんまり意味を感じないので、それはそれで良いのだと思います。
10年程前には5歳くらいの男の子が転落して頭蓋内出血だったけど、台風で動きがとれず 手術で助かる可能性が充分あったのに亡くなった事があったみたいです。
レアケースでしょうがお気の毒だと思います。

 >海保や自衛隊、消防などに依頼して、離島から本土に急患を送る手順は決まっているんですか?
多分日本全国一緒だと思います。
急ぐ時は当然空路搬送ですが、日が暮れるとドクターヘリが飛べません。
夜間空路搬送は自衛隊ヘリになります。
ドクターヘリは県境を越えての搬送が基本的には出来ません。
親戚家族がいる他都道府県の街への搬送を希望したとしても、誰も知り合いのいない地域に飛ばされたりします。
その時の手順はまず転院先に連絡して、受け入れ可能なら向こうから乗って来るフライトドクターへ連絡。
同時に消防に連絡して、救急車でヘリが着くとこにまでいきます(うちの病院にはヘリポート無いので、空港とか学校のグラウンドとかです)。
消防単独での本土搬送はシステム上ありません。
海上保安庁については、過去に海保の船での搬送が荒天時にあったようですが、
荒天時の交通機関はまず海から断たれる事が多いので 空がダメだから海保で、という選択の状況自体がまずありません。
一刻を争わない状況での本土搬送は通常の海路になります。

>大した容体ではないのに、急患輸送してくれ
相手によって一喝(けんか腰の人)するか、紳士的に説明(多数のまともな人)するか、聞こえないふりをする(不定愁訴の権化の様な方達)か決めますが、手段はさておき患者の希望だけでヘリは飛ばすことはありません。

■離島勤務はどのような理由でしょうか。(自分から希望されたとか)
前任者からの引き継ぎで「離島ならでは」的なことってありますか?

>>なんで離島に来たかっていうと行けと言われたから、以外に理由はありません。
離島勤務は当然(?)初めてでしたので、来てみるまでは皆さんと変わらない離島のイメージしか持ってませんでした。
断ることもできましたが、別に一生居ろと言われたわけでもなく、何せ外科医にとって魅力的な手術症例数が多い施設でしたので、断固断ることはしませんでした。
結果として、仕事の面では大成功でしたね。
離島ならではの前任者からの引き継ぎというものは特に思い当りませんが、万単位の人口がいるとはいえやはり村社会の様で、前任者は地域の政治に首を突っ込んでどつぼにはまり退任しました。
私は関わらないようにしてます。
「離島ならでは」のつながりでお話しすると、一年を通して良く人間が釣られてきます。
2ちゃんの話ではありません。
島内・島外を問わず、みんな良く釣りをしますが、投げ込み(?すみません、釣りはよくわかりません)の時に、他人の釣針が頭とかに引っかかって来院されます。
何を釣るのか知りませんが、しゃもじくらいの大きさのでっかく太い釣針で釣られてきたりすると、さすがに最初はびっくりします。
もう慣れましたが。
最近はまぶたを釣られてきた人が痛そうでしたね。
眼球で無かったのが幸いでしたが。
マリンスポーツも今の時期からは多くなります。
バナナボートで転落して頚髄損傷になった二十代の女性はかわいそうでした。
車いすにはならなかったようですが、後遺障害が残ったようです。
皆さんもモーターボートで引っ張る類のマリンスポーツは気をつけてください。

あと、個人的には 荒天時家に帰れなくなったり出勤できなくなったりします。
これはどうしようも無いです。
出勤できないときは何かと気がかりですが、一人でやってるわけでもなく部下が島内に住んでますので、なんとかしのげます。
そんな時は島に新聞は来ません。
曜日を決めて、麻酔科の先生も院外からお願いして来ていただいてますが、運の悪い方は麻酔医が来れないと、2週間ぐらい手術が延期なったりします。
そういうのは急がない手術だから良いようなものの、お気の毒です。

■悪天候などの不可抗力で離島の病院に何日か出勤できない時は、何処でどのように過ごされているのでしょうか?

>>何日も続けて出勤できないってのは今まで経験無いですね。
最高で1日半位だったと思います。
航空会社も船会社も頑張って出来るだけ動かそうとしてくれますからね。
すごく揺れますけど。
で、どこで何してるかっていう事ですけど、まず関係者とかスタッフへの連絡に追われます。
スタッフに外来の予約患者をどうするかの指示や、大変でない手術は部下のみでやってもらうか否かなどを
その時の部下の技量と手術の難易度を照らし合わせて判断したりします。
天候が大荒れの時の方が全く身動きとれないのが確定しますので楽です。
始発便は出るけど、昼位から動かないとかの方が複雑な判断をしないといけないので大変です。
私自身が来れたけど帰れないのは良いとしても、麻酔科の非常勤の先生は 翌日本土で別病院の麻酔予定がある訳で、来れるけど帰れないから最初から来てもらうのを断念しないといけない場合もわりとあります。
逆に途中からなら来れるパターンなら予定手術全てをこなせないので、どの患者さんにその日の手術をあきらめてもらうかを判断します。
突然の機材の故障なんかだと、全くの予想外なのでこれまた・・・。
そんなこんなで交通機関の状況を見ながら刻々と判断の変更をせまられますので、その日の動き方が全て決まるのに午前中一杯はかかります。
午後は 平日の休みが基本無いので普段いけない様な金融機関とかお役所とかの用事を済ませる時間にあててます。
直近2回の免許更新はいずれも嵐の日でしたw

■診療報酬について 何の治療が何点とか具体的なものが知りたいから教えて

>>自分の関わる範囲の主なものは記憶していますが、さすがにすべては記憶できません。
診療報酬点数表っていう緑色した本が普通に本屋で手に入ります。
そこにすべて書いてありますので 何か気になるようなら買ってみたらどうでしょう?
通常2年に一度改定されますが、今年の4月が改定でした。
今は領収書に点数ついてると思いますけど。

診療点数早見表 2012年4月版 [単行本] / 医学通信社 (刊)

■勤め先は総合病院レベルみたいですが 離島に勤務を始めてから、今まで専門的に診ていなかった部分を診るようになりましたか?
例:本土では胃腸外科→今は胃腸外科と脳外科と内科担当
麻酔科(と歯医者管轄と獣医管轄)以外は何でも受け持てると記憶しているので やはり医師が少ない地域では一人でみる分野を広げるのか気になりました

>>核心を突いた質問ですね。
実は私も来る前は同じ事を考えてましたが、結果は逆でした。
院内に2桁の医師数がいて、しかしながら島内医療機関が少ない状態では自分の専門分野の方が大勢集中し、専門分野を診療する絶対数が本土より増えます。
内科や一般外科の先生なんかは振り分け担当になって それはそれで本土と少し役割変わるみたいですが、
今の時代 診断付けた時点で島内でなんともならない専門外領域はさっさと本土送りしてるようです。
そんな訳で、私たちは本土にいる時よりも濃い密度で専門分野に特化してます。
多分医師間でもあまり知られてないので、ある意味ラッキーです。

医師19
医者になるのは勧めない

posted by 現実主義 at 21:00| 仕事・企業・学校 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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